「許すまじ」って言葉、たまに聞くことありますよね。
「許さない」という意味か「許すよまじで」という意味か分からないという方や、何が元ネタで「許すまじ」という言葉が登場したのか気になる方もいるでしょう。
「許すまじ」とは、「許さない」という意味です。
くだけた友人同士の日常会話などでもよく使われる「許すまじ」ですが、実はその歴史は長く最近登場した言葉でないのです。
かつては今とは少し違ったニュアンスで使われていました。
今回は、「許すまじ」という言葉の意味や歴史、元ネタについて紹介しながら、正しい使い方を解説していきます。
「許すまじ」の意味とは?
「許すまじ」は、「断固として許さない」「絶対に許さない」という意味です。
ひどく怒っていて、相手のことをどうしても許せない時に使います。
許すまじ、の「まじ」は色々な意味を持つ助動詞で、「許す」に付くとほとんどの場合、強い打消しの意味で使われています。
「許す、マジ」という意味は誤り
「まじ」という響きが「本気(マジ)」と同じだからか、「許す、マジ」と勘違いして、「許す」という意味で使ってしまう誤用もあるようですが、意味が真逆になってしまうので間違えないようにしたいところ。
もともとは書き言葉で、文語的な表現である「許すまじ」ですが、最近では日常会話でもよくつかわれるようになりました。
「許すまじ」の元ネタは?
「許すまじ」はよく曲の歌詞に使われたり、漫画やアニメの台詞に使われたりしていますが、特にこれといった元ネタなどがあるわけではありません。
突然生まれた造語や流行りことばではなく、昔から文章ではよく用いられる表現ですね。
「許すまじ」は古文でも使われている?
先ほどもちらっと紹介しましたが、許すまじは、「許す」に、強い打消しの意志を表す「まじ」がついた、古くからある日本語です。
助動詞である「まじ」は古語で、もちろん私たちが学校で習うような古文にもよく使われています。
わらはもさこそは思へども、今日明日様を変へんには、誰かは落人の方様の者と思はぬ人はあらじ。しからば名乗らずは左右なく許すまじ。 (保元物語)
これは軍記物語のひとつ、保元物語(ほうげんものがたり)の中の一節です。
ここでは、「許すまじ」という言葉が「そうであれば名乗らないわけには参りません。(名乗らないことは絶対に許されない)」と言った意味で使われています。
現在と使い方はあまり変わりませんね。
この保元物語は700年以上前に書かれたもの。
このころには普通に使われていた「許すまじ」が、少しニュアンスが変わりつつも今も使われているというのは、少し感慨深い気持ちになりますよね。
「許すまじ」の使い方や例文を紹介!
今まで紹介してきたように、「許すまじ」はどうしても許せない時に使う、強い意志を持った言葉です。
とはいえ、最近は若者言葉やネットスラングとして、コミカルに冗談っぽくつかわれる機会が増えています。
- 「あいつ、大事な会議の資料を忘れてきやがって…!許すまじ…!」
- 「えっ!私を差し置いてあの子とデート!?許すまじ!」
- 「今日は大事な日なのに、昨日の雷のせいでよく眠れなかった…。雷、許すまじ!!」
といった感じで、気心の知れた友人同士などで、面白おかしく使うことが多いようですね。
私も先日映画を観に行った時、感動的なシーンの最中に誰かの携帯電話の着信音が響き渡った上に、その音が止まらず数十秒続いたときは、さすがに「許すまじ…!」という気分になりました笑。
まとめ
今回は、「許すまじ」という言葉の意味について紹介してきました。
言葉は使われているうちに、時代とともに少しずつ変わっていくものです。
「許すまじ」もそのひとつ。
かつては強い意志をもった、ちょっとお堅い書き言葉として使われていたものが、話し言葉として、気軽に使われるようになりました。
時代に合わせて、変化していく言葉を柔軟に受け入れながら、コミュニケーションを楽しみたいものですね。
とはいえ、さすがに意味が真逆になってしまうような誤用には気を付けて、来たるべき「許すまじ」な瞬間に備えて、正しい意味、使い方を覚えておいてくださいね。